血と肉

ベラナ>このホログラムの船の中では、立場が逆転ね。私は捕虜って訳?

ドクター>違うんだ、聞いてくれ。立場が逆というのはそのとおりだが、その意味は技術者の君がここではホログラムの人物を治療できる医者になる訳だし、私はホロエミッター経由で船のマトリックスを安定させられるエンジニアっていう訳なんだよ。

ベ>なによ、それ。もう帰るわよ。

ド>そう言わないでくれ。どうだね、彼らはヒロージェンの技術者のおかげで進化したんだ。自立した光子生命体と言っていい。新しい生命体なんだ。

ベ>あたしにはそう見えないわ。単に彼らは狩りの獲物として反撃しているにすぎない。ドクターのような生命体としての多様性がないのは明らかよ。そりゃ彼らに時間を与えればドクターみたいになるかもしれないけど、今の彼らはペスト菌やコレラ菌と変わりないわ。

ド>待ってくれ。ベラナ、君はフランケンシュタイン症候群に陥っている。我々のような人工的に生み出したものに対する本能的な恐怖心の表れだ。

ベ>悪いけどね、ドクター。ホログラム相手に恐怖心なんかわかないわ。単に出来の悪い機械に頭にきているだけよ。修理してもうまくいかなきゃ蹴飛ばすだけ。運が良ければそれで直るわ。

ド>われわれは映りの悪くなったテレビか何かか…

ベ>そうじゃないの?どっちも光子を使っているし。別に悪い意味じゃないわよ、人間だって見方によっちゃ糞袋の固まりなんだから。あなたの方がよくわかってるだろうけど。構成する要素が違うから、アプローチが違うだけ。生命体として意思を尊重するかどうかは、魂にかかっているのよ。

ド>しかし私はストヴォコーに行けるとは思えない。

ベ>そうかしら?今度臨死体験プログラムを入れてあげるわよ、そうしてほしいなら。悪趣味だけど…彼らともこんな会話ができるなら、協力するわよ。そうじゃなきゃ、さっさと行くわよ。

ド>とほほ…

♪ちゃんちゃん



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