所要時間70年!の忍耐レース

本ページはSTAR TREK STAR CHARTSの発売に伴ってヴォイジャーの航海ルートがかなり明確になってきたのを受け前面改稿したものです。以前の分析は参考までに残してありますが、間違っているところも多いですのでご注意を。


連邦宇宙艦ヴォイジャー 最高巡航速度ワープ9.975。いつも7万光年、70年と言っていることから判断すると、普通なら1シーズン1年、1,000光年進めると考えてしまいます。(7万5千光年、75年という説もある。)しかしワープ9.975といえば5,754光速に達し、1年で5,000光年以上進めることになってしまいます。このギャップは実は二つの原因によるものです。
まずひとつはヴォイジャーの速度。実際のヴォイジャーのワープ9.975というのは24時間連続で出せるものではありませんでした。そしてもうひとつの理由はヴォイジャーのルート。前述のヴォイジャーのルートを見ると、かなりあちこち寄り道したり迂回したりしています。決して直線的には進んでいません。また、補給・交易そのものにも時間がかかるし、異種族との交流、科学的調査もあります。
以上より、会話では1年=1,000光年ですが、ヴォイジャーが一年間に実際に移動する距離は438光年(平均速度がワープ6.2相当)となったようです。

ではこれから順を追ってヴォイジャーの軌跡を追ってみましょう。

第1シーズン

このシーズンは年の半ばにスタートしているため、300光年しか移動しませんでした。特別なイベントもなし。
#1:遥かなる地球へ CARETAKER
残り距離:70,000光年
スタート地点。宇宙歴48315.6
キム「センサーの故障でなければここは先ほどの位置から70,000光年も離れている場所です。」
ちなみに、この発言はバッドランドからのはずですが、バッドランドと地球は60光年以上離れています。どちらかというとデルタ宇宙域とは反対方向に。

第2シーズン、第3シーズン

このシーズンも特別なイベントがなく、それぞれ438光年移動しただけです。

第4シーズン

このシーズンからいきなり移動距離が大きくなります。ケスの贈り物と量子スリップストリームでそれぞれ9,500光年と300光年稼ぎ、それ以外にルーチンで438光年移動します。シーズン最後には地球から58,586光年のところまで移動した計算になります。
#70:ケスとの別れ THE GIFT
残り距離:70,000-(300+438+438)-9,500=59,324光年(第1〜3シーズン分も含めました)
ケスの贈り物で一気に移動。約10年短縮。
パリス「先ほどの位置から9,500光年の距離です。」
#76:時空侵略戦争 YEAR OF HELL
残り距離:65,000光年??(あれ?戻ってる?別の時間線だから?それもとも7万5千光年という説が正しい?)
ジェーンウェイ「地球から来たの。ここから 65,000光年離れた惑星よ。帰る途中なの。」
#82:プロメテウスの灯を求めて MESSAGE IN A BOTTLE、#83:HUNTERS
残り距離:60,000光年
#82:ジェーンウェイ「60,000光年の彼方が今日は少し近く思えるわ。」
#83:パリス「60,000光年の彼方だぞ。」
ちなみに、#91:LIVING WITNESSでも「60,000光年は遥かかなただ。」という発言がありますが、話が話しなのでいまいち参考にならないかも。それにしても#76と5,000光年違うのは、やはり第4シーズンあたりから7万5千年説に変更になったのでしょうか。
#93:放射能星雲の孤独 ONE
残り距離:55,000光年
ジェーンウェイ「1万5千光年も旅してきたの。」
この発言はかなり多めの「約」でしょう。
#94:裏切られたメッセージ HOPE AND FEAR
残り距離:?-300=?光年
量子スリップストリームは2日で15光年進める技術。
ジェーンウェイ「地球への距離は300光年縮めることができた。」

第5シーズン

このシーズンもかなり稼ぎます。いうなれば次世代の超光速航行技術である量子スリップストリームとトランスワープを使うのですから。それぞれ10,000光年、20,000光年。空間の渦での2,500光年に、ルーチン移動438光年も含めるとシーズン終わりにはスタート地点から44,352光年、ゴールまで25,648光年の地点まで進みます。
#95:暗黒の汚染空間 NIGHT
残り距離:58,586-2,500=56,086光年
空間の渦を使って空虚を通過、約2年短縮。
セブン「2,500光年以内に星系は一つもない。」
マロンのエムック「2、3光年先に空間の渦がある。そこを通ると反対側へ出られるんだ」
#100:過去を救いに来た男 TIMELESS
残り距離:56,086-10,000=46,086光年
量子スリップストリームで10年短縮。
ジェーンウェイ「スリップストリームフライトは短時間だったが、旅が 10年は縮まったようだ。」
#107:ブラックホールと伴に消えた恋 GRAVITY
残り距離:約50,000光年
パリス「あんたの奥さんがいるのは50,000光年のかなただ。」
この発言は約でしょう。
#110:ボーグ暗黒フロンティア計画 DARK FRONTIER
残り距離:46,086-20,000=26,086光年
トランスワープを利用。
ジェーンウェイ「トランスワープコイルが壊れるまでにゆうに20,000光年は進んだ。これで地球に15年は近くなった。」
この発言だと1年で1,300光年以上?でもこの計算はここだけのようです。
#120:異空生命体を呼ぶ者達 EQUINOX
残り距離:35,000光年
ランサム「我々は地球から 35,000光年も離れているんだ。簡単に船を放棄するわけにはいかん。」
戻ったように見えますが、この発言はちょっとおかしい。イクアノックスとヴォイジャーが遭遇したのはほとんどベータ宇宙域とデルタ宇宙域の境界近くで、かなり地球に近づいているはずなんです。

第6シーズン

このシーズンはずいぶんおとなしくなり、亜空間通路と亜空間カタパルトでそれぞれ200光年,600光年と合わせても数百光年しか稼いでいません。これにルーチンの438光年を加え、出発してから45,590光年、ゴールまで24,410光年になります。
#127:亜空間制圧戦争 DRAGON'S TEETH
残り距離:25,648-200=25,448光年
亜空間通路を使用。
パリス「亜空間に入ってから200光年以上進んでいます。」
キム「たった5分で200光年も?」
#129:果てしなき疑惑 VOYAGER CONSPIRACY
残り距離:25,448-600=24,848光年 または 25,448-3,000=22,448光年
亜空間カタパルトを使用。1セクター20光年だから30セクターなら600光年、3年分なら3,000光年なのだが…
ジェーンウェイ「一気に30のセクターを越え、一時間足らずで故郷への旅を3年も短縮する。」
#141:宇宙詐欺師ダーラ LIVE FAST AND PROSPER
残り距離:30,342.4光年
テルシアス人「30,342.4光年光年です。正確には。」
前回から全然進んでない、戻ったくらい。もちろん、ダーラとヴォイジャーの位置が違っていた可能性もあります。もうひとつの説明として考えられるのは、やはり7万5千光年説?
#144:ジマーマン博士の屈辱 LIFE LINE
残り距離:30,000光年
ジマーマン博士「そのためにわざわざ3万光年向こうからマークIを呼び寄せたのか。」
この発言は、「約」と思われる。

第7シーズン

最終シーズンもおとなしく、438光年だけ。最終話直前で約46,028光年まで進み、あと23,972光年だったはずです。さて、その結末は…
#149:愛の危機 DRIVE
残り距離:35,000光年
ジェーンウェイ「ここは地球から35,000光年も離れているのよ。」
また増えました。ファイナルシーズンだというのに、足踏み状態です。それにしてもこの発言は遠すぎる。7万5千光年説をとってもこの時点で3万光年をきっているはずなんですが。
#150:狙われたマキ REPRESSION
残り距離:35,000光年
セブン「なぜ地球から35,000光年はなれたところにいる元マキをトゥボックに襲わせたのだ。」
ジェーンウェイ「ここは地球から35,000光年も離れているのよ。」
#152:幻の帰還計画 INSIDE MAN
残り距離:30,000光年
トロイ「どうやってヴォイジャーに送るっていうの。あの船から3万光年も離れてるのよ」
地球とミダスアレーとの距離がよくわからないので実際は3万光年より離れている可能性があります。VOY:PATHFINDER以来この距離については言及がないですよね?
余談:このエピソードでしきりに「測地線」というのが出てきます。geodesic foldの訳ですが、もともとgeodesic lineというのが測地線(測量での2点間の最短距離)なので、それが空間的に折りたたまれた(fold)ところということなんですね。このfoldというのはSFではwarpの類似語です。もっとも、スタートレックの世界では「ワープ」という言葉は普通のSFとは若干違う意味で使われています。
#161:略奪空間の怪人たち THE VOID
残り距離:30,000光年
チャコティ「本物はたった3万光年先です。」
この発言も、「約」と思われる。それにしてもここのところ進んでいませんね。

こうやって見ていくと、イクアノックスに遭遇したあたりから誤差が広がっています。そもそもケスの贈り物と量子スリップストリームとトランスワープだけでほぼ40,000光年ですから、あの地点で残りが35,000光年というのは変です。やはり7万5千光年説のほうが正しいんでしょうか。とりあえず本稿は7万光年説で記述してありますが、7万5千光年説なら残りの距離の計算のところでプラス5千光年すればよいでしょう。

なお、STAR TREK STAR CHARTSをみていると、地球とオカンパとを結ぶ線は、当然ながら傾いています。その傾きを考慮に入れると、ヴォイジャーが飛ばされたのは7万光年ではなくやはり7.5万光年に見えます。でもキムははっきりと7万光年といっているし、当初は一般に「7万光年」と称していたと思うんですが。

いずれにせよ、こうやって整理してみると、第6シーズンあたりからは艦隊本部と連絡が取れた上に旅程を半分以上クリアして、かなり余裕が出てきたせいで当初の「地球へ早く帰りたい」という雰囲気が薄れたようにも見えます。



ヴォイジャーの速度

VOY:CARETAKERで出てきますが、ヴォイジャーの最高巡航速度はワープ9.975です。最高巡航速度の原語はsustainable cruising velocityというわけで、維持可能な巡航速度となっています。ということは、この速度はずーっと出し続けるだけの能力を持っていると思っていました。しかし実際の定義は、STAR TREK THE MAGAZINE APRIL 2002 VOLUME 3 ISSUE 01のSTARFLEET TECHNICAL DATABASE BY R.M.STERNBACHで、

低速巡航ワープ速度 7.75 16日間(LOW-CRUISE WARP FACTOR)
高速巡行ワープ速度 9.25 2.25日間(high-cruise warp factor)
ダッシュ巡航ワープ速度 9.975 12.65時間(dash-cruise speed of Warp
と明記されています。ワープ9.975は巡航速度というより緊急速度という感じです。

そもそも、後に説明しますが、ワープ9.975というのは5,000光速以上なんです。ということは、単純計算では70,000光年を12年2か月で渡りきってしまうことになります。70年なんて、とてもかかりません。

実際には燃料補給や機械の保守、イオン嵐や戦争地域の迂回など、ノンストップでまっすぐ飛ぶわけにはいかないでしょうが、ヴォイジャーはとにかく「早く家に帰りたい」はずなので、10数年ですむところを70年もかけるというのは人間の寿命から考えると合理的ではありません。(現在若くて20歳としても、着く頃には90歳となって人生を棒に振ってしまう!そもそも、まっすぐ飛んで帰ろうとしても70年かかるようなことを言ってませんでしたっけ?)逆に70年かかるためには飛行速度としてはワープ8(1,024光速)程度が妥当ということになります。これなら68年4か月程度かかるわけです。そして実際には惑星探査や補給、迂回などで平均速度はワープ6.2(1年間に438光年)に落ち着いたようです。

ワープファクター

ワープファクターと光速について。もともとTOS時代はワープファクターの3乗が光速という単純な関係でした。これがジーン・ロッデンベリーの意向によって変更になりTNGでは速度無限大がワープファクター10になりました。ところが、いくつかの正式な資料(TVシリーズそのもの)/準正式な資料(Encyclopediaをはじめとするオフィシャルなガイド)では、このTNG時代の数値関係が明記されておらず、いくつかのポイントでの数値が示されているだけです。例えば、

ワープファクターと光速の対応表
ワープファクター光の速さの何倍か
6392
81,024
9.21,649
9.93,053
9.997,912

となっています。ちなみに、エンタープライズDは最高巡航速度ワープ6、最高速度ワープ9.6だそうです。実はこれらにうまくフィットする数式を作ろうとすると、非常に難しいのです。この対応を一つの数式で表すためにいろいろな式が考案されました。私の知っている限りでは、ネットニュースでの議論が盛んで、その様子がWarp Velocities FAQ(ネットニュースrec.arts.startrek.techなどをとりまとめたもの)にまとめられています。現在のところもっとも精度のよい式はWarp Velocityで提案されています。これからいくと前述のヴォイジャーの最高巡航速度ワープ9.975は5,754光速に相当することになります。


ところで…

これを見ていて思い出すことがありませんか?こんななぞなぞがあります。

どんな難事件でも1時間で解決してしまう名探偵ってだーれ?
そうです、1時間枠のTVミステリードラマみたいなんです。当初70年かかると言いながら、第6シーズン、6年で道半ばまで来てしまいました。これはまるで、7シーズン7年の枠のせいで解決してしまうミステリーみたいではありませんか。(笑)

スタートレックマガジンでは(補足資料)

U.S.S. VOYAGER's Journey(STTM JUNE 2000 VOLUME 1 ISSUE 14より)

この項は雑誌掲載記事をそのまま要約しています。私の意見は入っていません。記事にライターの署名はありません。

要旨:

まずはじめに、オカンパからガンマ宇宙域のワームホールに向かわなかったのは、地球に向かうのと大差無かったことと、ドミニオンの情報が断片的に伝わり始めた時期だったから。

リック・スターンバック(訳注:ヴォイジャーのシニア・イラストレータ兼テクニカル・アドバイザー。日本名は星小川(^^;))によれば、最高巡航速度9.975というのは12時間しか維持できないらしい。巡航速度はワープ6だそうだ。さらにこの速度でも燃料補給やエンジンの冷却、消耗部品の取り換えが必要だし、さらに周囲の科学調査も行うとなればもっと遅くなるはずだと言う。

だがこれではあまりにも遅いということで、1年に1,000光年というところに落ち着いたらしい。つまり巡航速度をワープ8と設定しなおしたことになる。

さらに言えば、Dark Frontierではボーグキューブを避けるために余計な2年、 The Ravenでボマースペースを迂回するために3箇月、Year of Hellでより最適なコースにすることで5年節約などといったエピソードからわかるようにコースによって必要時間がかなり変動するらしい。

さて、これまでの6年間で単純計算で6,000光年、The Giftでケスから9,500光年、Hope and Fearで量子スリップストリームにより300年、Nightでワームホールにより2,500年、Timelessで量子スリップストリームにより10,000光年、Dark Frontierで盗んだトランスワープコイルにより20,000光年、Voyager Conspiracyで亜空間カタパルトにより600光年。これらを合計すると48,900光年進んだことになる。

再びリック・スターンバックによれば種々の遅れや迂回を考慮にいれても故郷まであと30,000光年ではないかとのこと。

もし30,000光年というのが正しいとなるとあと1,500光年かそこらでそろそろベータ宇宙域ではないか。


参考サイト

ビジュアル的には、エンタテインメント・ジョウ報内のヴォイジャー帰還ルートのほうがよくわかります。地図の話で言えば、スタートレックの世界を描いた銀河系地図という記事もあります。

また、Star Trek Dimensionという英語のサイトの中で、The Star Trek Cartographyというのもなかなかすごいです。


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